[芹香編] 第7章 芹香side

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あれで不安が全部消えてしまったのだ。 …産むのが怖い、 子供が誰かに迷惑を掛けたらどうしよう、 ママ友と上手くやっていけるかな、 その前に入籍はいつすればいいの、 結婚式は…。 医師から妊娠を告げられたとき、 自分でも笑ってしまうほど、 次から次へと悩みが湧いて出て。 それこそ100以上あったと思う。 『嬉しい』よりも『怖い』に支配され、 ずっとそのことで頭がイッパイだった。 怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。 ニュースを観れば、 『誰が誰を殺した』とか、 『アイツが悪い、コイツが悪い』と 皆んな文句ばかり言っていて。 こんな悲しい世の中で、 この子は生きていけるのかと。 いつか産んだ私を恨むのではないか、 最悪、自分で命を絶つのではないか。 嬉しいはずの妊娠が、 喜んだのは最初の一瞬だけで、 後はずっとその調子だった。 …なのに。 昂さんのあの笑顔で、 それが全部消え去ったのだ。 大丈夫、この子は絶対幸せになる。 だって、あの人の子供なのだから。 これでもかというくらい愛されて、 うんとうんと幸せな子になるに違いない。
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