[芹香編] 第7章 芹香side

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2人揃って、 西村さんのマンションに戻るそうだ。 華子ちゃんと上手くいったので、 ココで暮らす理由も無くなったのだろう。 それほど長く暮らしていないのに、 何十年も一緒だった気がする。 それはきっと心の内を晒し、 お互いを理解し合い、 深く深く繋がったからで。 こんな密な関係は、 誰とでも…というワケには、 きっといかないだろう。 2人が出て行くと聞き、 傍目からも分かるほど昂さんは落ち込み、 西村さんが優しくそれを気遣っていて。 たぶん今も、 寂しい気持ちのままに違いない。 私と華子ちゃんが 台所で食事の後片付けをしていると、 すぐ横のダイニングで 西村さんが昂さんにこう言った。 「俺と昂くんって、家族みたいだよな。 ほんと、実の兄貴よりも昂くんの方が、 俺にとっては家族に近いと思う。 なあ、離れてもまたココに来るから、 昂くんもウチのマンションに来てよ。 なんか不思議と自信があるんだ。 俺たちの仲はずっと続くって。 だって俺、 妙に好きなんだよね、昂くんのこと」 …その返事は聞こえなかった。 きっと嬉しくて泣いてるんだろうな。 そう思ったら、なぜか胸がキュウとして、 気付けば私も号泣していた。
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