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「なに?どうしたの芹香さんッ」
「な、なんでもない」
「何でもないワケ無いでしょ?
あ、ほら、コレあげるから。
だから泣き止んで」
「え…」
華子ちゃんがスカートのポケットから、
恭しく取り出したのは、
近頃では珍しくなった、昆布飴で。
『渋いなあ』という驚きと、
『これを貰ったら嬉しいでしょ?
だから泣くのをヤメなさい』
…そう思っている華子ちゃんの思考が
面白すぎて、吹き出してしまった。
「あは。芹香さん、もう笑った。
仕方ないなあ、もう1個あげるから」
「ううん。1個で充分。
ね、どこで買ったのコレ」
隣家の須崎さんに貰ったのだと、
華子ちゃんは自慢げに答える。
いつの間にか須崎さんの奥さんとは、
家に招いて貰うほどの仲になっていて。
先日も一緒に、
大量のインゲンを筋取りしたそうだ。
「市販のインゲンは若いのが多くて、
柔らかいから筋を取らなくてもイイって。
ウチのお母さんよりも年齢が上だから、
須崎さん、物知りなんだよ~」
その他にもいろいろと、
須崎さん経由の豆知識を披露し出す。
このコはどこに行っても、
砦が無いと言うか。
馴染むなあ。
私なんて、
24年も須崎さんの隣りに住んでるけど、
未だに打ち解けて会話したこと無いよ?
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