[芹香編] 第7章 芹香side

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「須崎さん、寂しがり屋なんだよ。 一人娘が名古屋に嫁いじゃって。 なんかねえ、 その直後くらいに寂しくて寂しくて、 死のうかと思ったって」 食器を拭いていた手が止まる。 そんな重い話を、そんなサラッと…。 苦笑いする私に、華子ちゃんは続ける。 「やだ芹香さん。 誰でも一度は死にたいと考えるってば。 逆にそれが人間ってモノだよ? 須崎さんなんか、 今年67歳だって。 そんな長く生きていれば、 1回しか考えなかったって方が、 私は偉いと思うけどな」 …この子は。 たった17年しか生きていないのに、 なぜこんなに人の痛みが分かるのだろうか。 てへへと笑って華子ちゃんは言った。 「なあんてね。 ウチの実家、いろんな人が集まって、 しょっちゅう酒盛りしてるでしょ? 昔はそこで大人しく座ってたから、 皆んなの話を聞かされてたんだよ。 自分1人で経験することは限られるけど、 たくさんの人と話をすれば、 その経験をその人数分、教えて貰える。 当時はイヤイヤだったけど、 今となれば、有り難いことだったと思う。 だから芹香さんも、 近所付き合いをしてみたら? 面倒なことも多いけど、 得ることも多いよ」
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