[芹香編] 第7章 芹香side

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そう言って、 華子ちゃんは最後まで笑顔のまま、 元気イッパイに去って行く。 反対に西村さんは今にも泣きそうで、 弱々しく手を上げ去って行った。 振り返ると既に昂さんは号泣してて、 恥かしそうにこう言い訳する。 「最近、涙腺がバカになっちゃったんだ」 「…みたいだね」 「泣く男なんて、カッコ悪いよな」 「ううん。そうでもないよ」 だって、容子さんが言ってたから。 >両親を亡くし、 >1人になったというのに、 >昂はあまり泣かなかったの。 >悲しみよりも、驚きの方が大きすぎて、 >泣くヒマが無かったんでしょうね。 …って。 その分をいま消化してるんじゃないかな。 よく考えたら、おかしな話だよね。 悲しくても、嬉しくても涙が出るなんて。 「あ、ねえ、昂さん。 それ、別れが悲しくて泣いてるんだよね」 ついっと一粒だけ親指で掬い、 私の手のひらに乗せながら彼は答えた。 「いや、笑うなよ? 『幸せだなあ』と思ったんだ。 ほら、家族が増えたみたいな気がして。 容子さんや河合さんはもちろん、 芹香に西村さんに華子ちゃん。 皆んな皆んな、俺の家族だもんな」 …愛しい気持ちが溢れてくる。 堪らなくなって私は昂さんを、 背中からギュッと抱き締めた。
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