[芹香編] 第7章 芹香side

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…そっか、そうなんだ。 この人にとっては、何もかもが軽いんだ。 恋愛なんかその筆頭格で。 そんなことで傷つく方がおかしいって、 きっとそう思っているのだろう。 トントンと後ろから昂さんが背中を叩く。 慌てて私は足を進めたが、 席に着く前にまた、圭くんに遮られた。 「俺、先週このホテルで挙式したんだ。 相手が妊娠してさ、ほんと失敗したよ。 って、もしかしてその人、彼氏?」 圭くんが誰なのか分からないまま、 昂さんは自己紹介を始めた。 「はい、芹香の婚約者で米田といいます。 あ、ご結婚おめでとうございます」 「う~ん。あんまり目出度くないけど。 正直、まだまだしたくなかったんだよな。 どうしても相手が産むってゴネるからさ」 その後も圭くんはペラペラと喋り続ける。 披露宴の際に奥さんが忘れ物をし、 それを1人で受け取りに来たのだと。 奥さんになった女性は、 長年同棲していた彼女ではなく、 逆ナンされて数回会っただけの、 女子大生なのだそうだ。 最後まで私は愛想笑いを浮かべ、 彼が去った後、胸を撫で下ろす。 …良かった。 あの時、関係を続けていたら、 私が圭くんと結婚していたかもしれない。 その場限りの甘い言葉に騙され、 愛の無い結婚をして、 そしてすぐに破綻しただろう。 事情を把握できず、 困った顔をする昂さんの前で、 私は繰り返し『良かった』と呟いた。
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