第五章 深まる謎

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 眠ったはずだった俺は、自然と目が覚めた。時計は六時を示している。この部屋に時計はあるが、壁掛けなので目覚まし機能などはない。なのに、一応六時に目が覚めた、ということは、体内時計がきちんと動いているからかもしくはいつもと違う状態に警戒しているからか。 「……外は、暗いな」 冬なだけあって、まだ太陽は出ていないようだった。それでも、ほんのりと明るさははらんでいる。 「……だ……お……な……」 外から何か聞こえてきた。気のせいかと思ったが、今度はハッキリと聞こえた。 「だから、お前がやったんだろ」 誰の声かは分からないほど小さいものの、その内容は俺の興味をひきつけるには十分だった。他に早起きしている人がいるらしい。 「俺じゃない」 萩さんの声だ。相手は誰だ? 「和紀さんから聞いたんだ。全部知ってる」 ……南槻さん? 「……俺じゃない。俺じゃ、ないんだ」 「……そう」 萩さんの言葉に、その人は舌打ちをして二文字を吐き出した。
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