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今日も世界は僕という存在に気づかずに時を歩んでいく。
僕の1日は朝日が顔を出すと共に始まる。
元々眠ることは僕に必要なかった。
でも夜になると人はみんな目をつぶり静かになる。
それをなんとなく、真似してみた。
自分が何者かなんてわからないけど、きっと人間なんだと信じて。
それから僕がやることといえばただひたすら人間観察。
誰にも僕が見えないからどこにだって入れるし誰だって観察することができる。
みんなが憧れるアイドルや有名人だって身近で観察することができる。
気づかれることがないのは少し悲しいけれど。
言葉を覚えたのもこの人間観察によるものだった。
誰とも交わすことはできない言葉を覚えることは僕にとって無駄かもしれない。
でも僕の存在自体無駄なものだからそんなことは気にしない。
今日も同じような1日を、無駄で埋め尽くされた1日を過ごす。
ゆっくりと舞い落ちていた白い雪が雨へと姿を変え冬の空気を凍えさせていた。
僕には温度も感じることができないしものに触れることもできない。
雨すらも僕を無視して地面の元へ垂れ落ちる。
街を歩く人々は皆息を白くさせ、傘を片手に帰路を急ぎ足で歩んでいた。
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