0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は忙しく歩く人達をゆっくりと観察しながら歩いていた。
すると突然自分の真上からの雨が止んだ。
僕は混乱した。
これほど長く生きてきたのにそれは初めての経験だったから。
顔を少し上げてみると傘が僕の頭上を守っていた。
「おい、お前。迷子かなんかか?そんな格好で傘もささずに・・・風邪引くぞ!」
振り向くと高校生くらいの男の人が僕の目を見て、僕に話し掛けていた。
目の前の現実が理解出来ず思わず思考が停止した。
「ん?お前、泣いてんのか?取り敢えず迷子の理由は後で聞くから来い!」
「え、僕が、泣いてる・・・?」
戸惑う僕の腕を掴もうとしている。
無駄だ。
触ることなんて・・・。
ガシッ!
彼は僕の腕をしっかりと握って引っ張った。
初めて感じる感覚だ。
握られる感覚、それはとても温かかった。
無理やり連れて来られたのは近所のボロアパートの1階。
103と書かれた一室だった。
「あ、ちょっと待った!タオル用意するから身体拭いてから入れ!」
そういうと奥の方のタンスからタオルを出し、お湯で濡らし絞ってから手渡された。
「ほらよ。」
受け取りたかったが、当然のことながら取ることができずタオルは床に落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!