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僕は忙しく歩く人達をゆっくりと観察しながら歩いていた。 すると突然自分の真上からの雨が止んだ。 僕は混乱した。 これほど長く生きてきたのにそれは初めての経験だったから。 顔を少し上げてみると傘が僕の頭上を守っていた。 「おい、お前。迷子かなんかか?そんな格好で傘もささずに・・・風邪引くぞ!」 振り向くと高校生くらいの男の人が僕の目を見て、僕に話し掛けていた。 目の前の現実が理解出来ず思わず思考が停止した。 「ん?お前、泣いてんのか?取り敢えず迷子の理由は後で聞くから来い!」 「え、僕が、泣いてる・・・?」 戸惑う僕の腕を掴もうとしている。 無駄だ。 触ることなんて・・・。 ガシッ! 彼は僕の腕をしっかりと握って引っ張った。 初めて感じる感覚だ。 握られる感覚、それはとても温かかった。 無理やり連れて来られたのは近所のボロアパートの1階。 103と書かれた一室だった。 「あ、ちょっと待った!タオル用意するから身体拭いてから入れ!」 そういうと奥の方のタンスからタオルを出し、お湯で濡らし絞ってから手渡された。 「ほらよ。」 受け取りたかったが、当然のことながら取ることができずタオルは床に落ちた。
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