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彼はその様子を表情を変えずにじっと穴があくほど見ていた。
「お前・・・。」
「ち、力が入らないんだ。」
どうしてだろう。
気がついたら嘘をついていた。
そんなことしたって無駄なのに。
「しょうがねーな。俺が拭いてやるよ!」
するとまた不思議なことが起きた。
タオルを手に取った彼には僕の身体を拭くことが出来たのだ。
理由はわからないけど、彼を経由した物質は触れるってことだと解釈した。
身体が徐々に綺麗にされていく。
それは汚れていくタオルを見れば一目瞭然だった。
「こんなに汚して・・・。暫く風呂入ってねーだろ。少し臭うぞ?」
「臭い・・・?」
どうやら僕も、臭いがあるらしい。
今まで自分で綺麗にしたくても触ることが出来なかった。
むしろ僕には身体がないんじゃないかと思う時もあった。
でもここに、僕を見つけた人がいる。
初めての気持ちだ。
なんだか、温かい。
「あれ、でもお前全然濡れてないな。もう乾いたのか・・・?」
「え?う、うん。僕は乾きが早いんだ。」
「ふーん、そうか。いいな。」
・・・納得してくれた。
僕はどうして嘘をついているんだろう?
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