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その夜、僕は初めて人と一緒に寝た。
同じ布団に入ると布団の温もりを感じることが出来た。
こんなに気持ちがいいものなんて知らなかった。
道路を通る車の音が少し五月蝿くもそれもどこか心地よいものを感じる。
「こんな風に人と寝るなんて久しぶりだなぁ。」
「裕也には、家族はいるの?」
「あぁ。親父は小さい頃に死んじまって母さんと弟の三人で暮らしてた。毎日川の字で寝ててな。こういう風に寝るまでずっと話してたんだ。元気にしてるかな。」
「どうして、今一人暮らししてるの?」
「ある高校から声が掛かったんだ。うちの高校に特待生として来てくれないかって。そしたら金も一切かからなくて母さんに負担がかからなくなるだろ?」
母親の負担を減らすために裕也は離れたところで一人で暮らしている。
でも僕はそのことに納得が出来なかった。
「どうして裕也はそんなことをするの?だって一緒に暮らせば生活費だってかからないし、身の周りの世話だってお母さんがしてくれるんでしょ?ひとり暮らしすることが裕也にとってメリットがあるとは思えないよ。」
「お前・・・。ずっと一人だったんだもんな。俺は母さんにこれまで育ててもらった恩があるんだ。そのことに感謝してるし、母さんに対する愛情もある。そんな母さんに楽してもらいたいと思うのは当然なんだよ。」
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