七年目の記念日

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 風呂から出ても、その不安は解消されることなく、俺の心に居座り続けた。 「ご飯できてるわよ」  真波に声をかけられテーブルにつくと、美味しそうなハンバーグと白米が視界に入る。 「いただきます」  俺と真波は手を合わせ、同時に言った。  相変わらず、真波の作るハンバーグは美味い。気づかないうちに白米が減っているのだ。  そして、結局真波からは何も言われることなく夕飯を終えてしまった。 「ごちそうさま」  ご飯を一粒も残すことなく食べ終えた真波は、手を合わせて唱えた。 「ごちそうさま」  俺も同じように呟く。  一緒に住み始めてから、『“いただきます”と“ごちそうさま”はちゃんと言わなきゃダメ』と真波は俺に、口を酸っぱくして言っていた。俺が無意識に言えるようになるまで、飯の度に何度も繰り返した。はっきりとは覚えてないが、それまでおよそ二年くらいかかったのではないか。  結局、夕飯の後ですら真波からは何も言われない。不安はやがて、苛立ちへと変わっていった。  この後はいつものように、二人は別々の布団で眠るだけだ。  三年前くらいまでは、毎晩真波と一緒の布団で寝ていた。真波を抱きしめたときの、幸福が満たされるような懐かしい感覚が蘇ってくる。ブルーだった気分が、さらに青みを増していく。  不安と苛立ちと悲しみが入り交じった複雑な気持ちで、俺は真波に問いかける。 「真波、今日、何の日か覚えてる?」 「え? ん~。何の日だったかしらね」  曖昧な笑顔で最愛の女にそう言われ、俺が泣きそうになった直後、ドアの開く音がした。 「真波ー! 帰ったぞ」  そう言って帰ってきた父は、大きな箱をテーブルに乗せる。  いつからだろうか。父を真似て、母親のことを名前で呼び捨てるようになったのは。 「もう、遅いじゃない」 「すまん、道が混んでて」 「じゃあ、計画通りいくわよ」  真波が父にこっそり何かを渡す。 「せーの」  小さな声で、父と真波が合図をする。  パーン! とクラッカーが大きな音を立てる。  そう、今日は俺の誕生日なのだ。  イチゴの乗ったバースデーケーキがテーブルの上に姿を現す。  ケーキに立てられた七本の蝋燭に火が点けられ、明かりが消される。 「七歳のお誕生日おめでとう!」
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