壱章 借の屋敷

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その少女は 大きめの黒いパーカーを着ていて 寝ていたせいで片方は肩からひじのところまでずり落ちている 中は黒の半袖に半ズボンで黒い靴下をはいていた 肌は普通より白く 黒い髪は多分背中の真ん中あたりまであると思う そして まだ眠そうな眼は俺と少女が契約したあの深い森そのもののような翠 少女を観察してると 「調子はどう」 ときかれた 「…っ!あっああ少しだるいが平気だ」 「そう。`眼´は?」 「!?」 そう言われてはじめて気づいた 自分の`右目´があることに 気づかなかった いや言われなければ気づくことができなかっただろう それくらい`自然すぎる´のだ そして体の傷や汚れもなくなっていることにも気づいた 「それはあなたの借り物」 「借り物?」 「そう。その眼は`器´あとはあなたが求めるものを自分でてにいれるだけ」 「俺の…」 これでアイツ等に復讐ができる! そう俺が考えていると 「さて。行こうか」 と突然少女がそう言った 「何処に行くんだ?」 「リビング」 「なんでだ?」 「三日も眠ってたからね。準備はできてる」 俺の質問を無視してまるで独り言のように言っている そしてのろのろと動き出すとベッドのしたにあった黒い靴をはくと ふらふらとどこかにぶつかってもおかしくない歩き方をしてドアにむかっている 慌てて俺も用意してあった靴をはくと少女についていく
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