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・・・・・・彼女が来た。
当然開けるつもりはない。早く帰ってくれよ。
でも、そんな僕の願いは虚しく散った。
ガチャ。
鍵の開く音がした。
・・・・・・どうして。
「こんばんは。」
そこには、いつもと変わらず笑顔の彼女が立っていた。
そこで僕は、最大のミスに気づいた。油断して、チェーンを掛けるのを忘れていたのだ。
だって、彼女が鍵を開けられるはずがないと、心のどこかでそう思っていたから。
「もう、酷いじゃない。鍵を掛けるなんて。でも良かった。合鍵作っておいて。
あれ?そんな鞄持ってどこか行くの?」
変わらず微笑む彼女。
恐怖がまとわりつく。
早く逃げないと。
咄嗟に彼女を突き飛ばして玄関に向かう。
さすがの彼女も突然のことに対応できず、尻餅をついていた。
適当に靴を引っ掛け、家を出る。
ドアを閉める前に振り返ると彼女が何か呟いているのが聞こえた。
「どこに行ったって無駄よ。貴方には私が必要なんだもの。
だから、また・・・・・・ね。」
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