また・・・・・・ね。

4/14
前へ
/14ページ
次へ
「こんばんは。」 そう返事を返すと女は更に話しかけてきた。なかなか話の上手い人で、たったの数分ではあったが、気づけば笑顔で彼女と会話をする自分がいた。 それなりに楽しかったが、何分病み上がり。無理をする訳にはいかない僕は、きりのいいところで話を切り上げ、彼女に別れを告げた。 「今日はお話ができて本当に楽しかったよ。じゃあ、またね。」 彼女もそう笑顔で僕に返事をした。 ・・・・・・また、があるのか。 僕達は確かにさっきまで会話に花を咲かせていたが、連絡先を交換したわけではない。それだけではなく、ついでに言うと、僕は彼女の名前さえ知らない。 でも彼女は、“また”と言う。 だからと言って、今すぐに連絡先を教えようとは思わないが、彼女の言う“また”に、僕も賭けてみようと思った。 もしまた会ったら、その時は。彼女の名前を尋ねよう、そう誓って。 こんな出会いが再び起きたなら、それはもう、僕達が出会ったことは偶然なんかじゃないはずだから。 それに何より。僕はまた、彼女に会える気がしていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加