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「こんばんは。」
そう返事を返すと女は更に話しかけてきた。なかなか話の上手い人で、たったの数分ではあったが、気づけば笑顔で彼女と会話をする自分がいた。
それなりに楽しかったが、何分病み上がり。無理をする訳にはいかない僕は、きりのいいところで話を切り上げ、彼女に別れを告げた。
「今日はお話ができて本当に楽しかったよ。じゃあ、またね。」
彼女もそう笑顔で僕に返事をした。
・・・・・・また、があるのか。
僕達は確かにさっきまで会話に花を咲かせていたが、連絡先を交換したわけではない。それだけではなく、ついでに言うと、僕は彼女の名前さえ知らない。
でも彼女は、“また”と言う。
だからと言って、今すぐに連絡先を教えようとは思わないが、彼女の言う“また”に、僕も賭けてみようと思った。
もしまた会ったら、その時は。彼女の名前を尋ねよう、そう誓って。
こんな出会いが再び起きたなら、それはもう、僕達が出会ったことは偶然なんかじゃないはずだから。
それに何より。僕はまた、彼女に会える気がしていた。
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