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話を聞いたとき、僕はグローブよりもゲームが欲しい、とごねたような気がする。 母は「はいはい」と笑いながら、僕の頭を優しく撫でて、そのまま抱きしめた。 その結果、倉庫には今も僕の手には大きすぎるグローブが、一人で眠ったままでいる。 「……」 母の話は、いつも決まって父のことだった。 そのせいか、僕は母のこともよく知らなかった。家族というピースが、僕には決定的に欠けているような気がした。 母は、僕のことを知っているのだろうか。考えて、やめた。 そんなこと考えたって、どうにもならないことだ。 玄関の鍵を開けて、外に出る。何となく、今日は家の中にいたくなかった。 辺りはすっかり暗くなって、昼間と同じ格好だと若干冷える。 それでも、家の中にいるよりはマシだった。 裏口に回り、倉庫へと向かう。 普段はほとんど使わないから、戸の部分が若干錆びついていた。 力いっぱい引っ張ると、手にじんわりとした感触が広がる。 もう一度引っ張ると、ギギギ、と鈍い音がした。 もう一度。ギギギ、ギギ、ギギ、ギギギ。
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