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ガコン、と派手な音を立てて、倉庫の扉が開く。
肩で息をしながら、僕は中に入った。
暗くて埃っぽいその中には、虫取り網や、自転車の空気入れ、縄跳び、など普段使わないものがひっそりと息を潜めていた。
その奥、ガチャガチャと荷物をひっくり返してみると、あった。
埃被って色褪せている、紛れもない父のグローブだ。
空気は抜けていたけれど、ボールもいくつか見つけた。
取り敢えず全部取り出して、外に出る。
うっすらともう星が出ていた。心なしか吐く息が白く見える。
こんな遅くに出歩いたのは久しぶりだ。少しだけ、ワクワクしていた。
グローブを手にはめる。ゆっくりと指を沈み込ませるけど、何だかしっくりこない。
どうやらこのグローブは、左用みたいだった。
全身の力が一気に力が抜けて、思わず笑いそうになった。
つくづく何も知らないんな僕は、ということを改めて思い知らされた気分だった。
肌に感じる寒さが、僕のことをうすら笑っているようだった。
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