1

2/5
前へ
/22ページ
次へ
僕の担任教師は、ババロアと呼ばれていた。 本名は馬場正平で、ジャイアント馬場と同じ名前だからジャイアントと呼べ、みたいな訳の分からない自己紹介をしていたのを、今でも覚えている。 最初の方は、みんな面白がってジャイアントと呼んでいたけれど、段々と飽きてババロアになった。生え際の後退具合から、ババロアハゲと呼ばれることが多くなっていたことは、先生にはとても言えない。最近は省略して、大体「ハゲロア」で定着している。 僕は父のこともあって、そのままババロアと呼んでいた。最も、本人の前ではみんなかしこまって「馬場先生」と呼んでいる。僕らなりの、ささやかな抵抗だった。 ババロアは数学の教師だった。中学に入学したての僕たちにとっては初めての教科で、それをことごとく苦い思い出に塗り上げたババロアが生徒から反感を買うのは、考えれば当然のことだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加