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ため息をつきながら、僕は持っていた紙をくしゃくしゃにしてポケットに入れる。 今日ババロアから返された、数学のテストだった。 クラスの中でも、僕はとりわけ数学のできる方だと思う。 目立って活動することもなく、静かに過ごしていることが多い僕は、恐らくババロアから「真面目な生徒」と思われていたはずだ。 その生徒が、今回のテストで、60点代をたたき出した。 きっと不満で仕方なかったのだろう。答案を渡される時にも、ババロアは僕を恨みがましく睨んでいたのだから。 「あとで職員室に来い」 ババロアから小さく告げられたとき、胸の奥がきゅっと痛んだ。 それから僕は、今の今まで動けないでいた。 「……」 ポケットに入れたテストを、もう一度広げてみる。 64点。悪い点数じゃないはずだ。 こんな点数でも、クラスの平均点よりはいくらか上だった。 だけど、多分それとこれとは関係ない。問題は、別にあるのだから。 ようやくあきらめがついて、教室を後にする。 重たくなる足取りを引きずって職員室に向かっている途中、理科の教師とすれ違った。 挨拶をしたけれど、返事は返ってこなかった。
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