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「いえ……。その、あの」 「人と喋るときはこっち見て話すんだ。両親に習わなかったのか」 反らした視線の先に、先生の顔が飛び込んでくる。 慌てて飛びのくと、その衝撃で椅子がガタッ、と盛大に音をたてた。 図書室にいた、他の生徒からの視線が一斉に集まり、すぐさま元の位置に戻った。 いつの間にか先生は僕の正面に座っていて、完全に逃げ場を失う。 観念して先生の方を見ると、「よし、それでいい」と満足げに頷いた。 「それで、どうだ、学級委員」 「え……」 やけに押すな、と思った。 僕より成績の良い生徒なんて、学年には何人もいる。 逆に、僕のことを優秀だと思っている先生は、ほとんどいないはずだ。 どの先生からも悪目立ちしないように、平均点以下は取らず、逆に、良すぎても目立ってしまうから取り過ぎないように。 完璧に、とは言わないまでも、ある程度コントロールしていたつもりだった。 学級委員なんて、だから誘われるとは思ってもいなかった。 それに僕には、仕事を引き受けられない理由があった。 もごもごと、言葉を濁しながら壁にかけられた時計に目を移す。
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