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「でも、僕、友達、とかいないし。人前で、話す、のも」
「そんなのやっているうちに慣れる。むしろ友達を作るいい機会だろう」
「でも……あの」
「何だ、はっきりしない奴だな、やるのか、やらないのか、どっちなんだ」
「……考え、ておきます」
少し考えた後、先生は「分かった」と頷いて続けた。
「再来週までには決めておいてくれな。テスト頑張れよ、特に数学」
ガハハ、と笑いながら先生は席を立った。
僕がやっとの想いで「ありがとう、ございます」と頭を下げると、その頭をわしゃわしゃと思い切り撫で回される。
「髪、少し伸びたな。あんまり長いと、見える物も見えてこないぞぉ」
それなら、先生の視界はバッチリですね。
皮肉でも投げられたら、どれだけ良かっただろうか。
そんなことを考えながら、遠くなる先生の背中を見つめていた。
答えなんて決まり切っている。なのに、どうして僕は先延ばしになんかしたのだろう。
その日から、僕の中で馬場先生は「ババロア」になった。
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