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「……ただいま」 誰に言うでもなく呟く。 案の定家には誰もいなく、声だけが空虚に響いた。 部屋の至る所に詰まれている段ボールが、寂しさをより助長させる。 冷蔵庫の中には夕飯用の野菜炒めが用意されていて、それが母親の帰る時間を物語っていた。 中を目で探り、見つけたプリンを取り出して、リビングに向かう。 恐らく食後用に用意されたものだと思うけど、今はとにかく甘いものが欲しかった。 リモコンを取って、適当にテレビをつける。 内容を楽しもうにも、ニュースは面白くないし、ドラマは途中からだと全くもってちんぷんかんぷんだ。 仕方なく教育テレビをつけると、お兄さんが笑顔で子供たちと体操している、見慣れた番組が放送されていた。 ぼんやりとそれを流し見しながら、プリンをスプーンですくい、口の中へと放り込む。 舌に馴染んだ冷たさと甘さが、凹んだ心をゆっくりと暖めてくれた。
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