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一瞬見開いた目は次第に細められ、まるで孫を愛でるような優しい顔で神がおれを見てくる。
「何?」
「いや、可愛い笑顔だと思いまして」
笑顔?笑ってた……おれが。
つまり、
「ユー、ソー、ラッキー」
だって、おれも見たことがない。
周りからはよく、何考えてるのかわかんない。人形みたいだと言われた。
それほどおれの表情が変わることはないらしい。
「そんなことはありません。朋也くんの感情はきちんと顔に出てますよ。ただ、周りと比べて変化が小さいため気づかれにくいのでしょう」
「そ」
変な感じ。今まで否定的な言葉ばかり聞いてきたから、嬉しいのか恥ずかしいのか自分でもわからない。
複雑だけど暖かい気持ちになれたのを神に気づかれたくなくて、おれは強引に話を軌道修正し先を促す。
「おっと、どこまで話しましたか」
「王子が仕事人、を……連れていく、って。世界…神?が叶えた。から、今ここ」
「はて、王子と仕事人とは?」
急に出てきた単語に首を傾げた神に慌てる。
おれが周りに便乗し勝手に呼んでる二人の呼称をどう説明すれば。
そもそも二人にすら許可を取らずに呼んでるし。
「ああ、地球で呼ばれていた二人の通り名ですか」
うんうん唸っているおれを神が解決した。
考えを読むことで。
「では、朋也くんに合わせて……イレギュラーな仕事人を転生させるための代償。それが朋也くんです。地球では存在自体をなかったことにされ、助けるには世界神により完全に存在を消される前に回収し、転生してもらうしかありませんでした」
「転生……おれ、も?」
「ええ。正確には生まれ変わるかたちになります」
「断っ、たら」
「残念ですがここでお別れです」
別に転生したくないわけではない。したいわけでもないけど。
未練はないし。親しい人のいないからおれが消えても問題ない。
でも、神と会えなくなるのはちょっと嫌だな。
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