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初めてだ。別れるのが嫌だなんて。
人でも動物でもおれから離れていくのを引き止めたことはなかった。おれもそれでいいと思ってた。
でも、今の気持ちは大切にしたい。
「転生……したら、また、会える?」
「会えますよ。私も仕事があるのでいつでも簡単に。とはいきませんが」
「なら、する」
「はい」
短い返事に、優しく穏やかな表情を見せる神が恥ずかしい。すべて見透かされてるみたいだ。
いや、考えを読めるのだから実際に筒抜け状態に違いない。
ならしかたないか。
転生するにあたって、口で上手く伝えられる自信がないから、この際神の能力を利用させてもらう。
伝えるのはおれの希望プラン。
『おれは傍観者でいたい。つかず離れず王子と仕事人の言動を遠目で見てるだけがいい』
「構いません。朋也くんの人生です。好きなように」
おれの好きに、と言われる言葉の意味合いが今までと違うのがなんとなくわかる。
好きにに続く『してもいい』と『すればいい』では相手を想う度合いが違う。
出会ってから神が否定したことは、初めのおれが妖怪と間違えたところだけだった。
受け入れられてることが嬉しい。思った以上におれは神のことが好きらしい。
どうやったらバレないで済むか頭を捻っていると、神が小さく咳払いを一つ。
「これから朋也くんが転生するのは、魔法や武器で戦うのが当たり前の世界。傍観者でいられるために手助けを。何か欲しいものはありますか?」
傍観者でいるために、必要なこと……
『地球での記憶と異世界の知識。あと魔力は平均より少し多く、くらい?』
「魔力は無限に、全属性の適性や特殊能力を付与することもできますが?」
『いらない。目立ちたくない。でも、傍観者でいるのに便利な属性は欲しいかも』
「わかりました。では希望通りに。加え、想えば私と通じることができるようにしましょう」
うん。これはいらなくない。
あとは転生してもらうだけだ。
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