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勇気 side
新と一緒に魔法陣へ飛び込んだ先は辺りに靄がかかりどこかわからず、聞こうにもなぜか頼りの新の姿がない。
はぐれたのなら捜しに行かないと。
「安心してください。ここは私の空間、部屋のようなものです。それに、ご友人には先に異世界へ渡って頂いております」
「えっ、僕声に出してないはずじゃ。というか誰?」
「驚かせてしまいましたね。私は橘勇気様のいらした『地球』とこれから向かわれる『リアース』の二世界を管理しております。世界神のヴィッツィと申します」
澄んだ声と共に現れたのは、背中に羽根をつけ長い金の髪を持つ綺麗な女の人だった。
天使ではなく神様?
「その神様が何で僕をここに?」
「勇気様のいた地球とは異なり、リアースは魔法が発達した世界。勇者としての適性をお持ちの勇気様ですが、知識や準備もなしに向かえば危険です。ですからその手助けを」
魔法なんてまるでお伽話だ。
そんな世界の勇者に僕が選ばれたなんて信じられない。殴り合いの喧嘩だってしたことないのに。
「そんな不安や起こり得る危険を取り除くための私です」
「またっ!?」
考えを読まれたことに僕が驚くと、神様は口元に手を当て小さく笑う。
何だか恥ずかしくて赤くなる顔を俯かせると余計に笑われた。
「申し訳ありません、可愛らしかったもので。しかし先程告げた通り私は神。思考を読むのも容易なことです」
そうか、神様だから。
納得する僕に笑みを残したまま、神様が話の続きを進める。
「勇気様は大切なお方。少しでも安全な道が歩めるよう、私からの加護を受けて頂けますか?」
僕のためにして貰うことに否はない。
有り難く受け取った加護はどれも凄いものばかりだった。
リアースの知識、無限の魔力に全属性の能力。そして――不死の身体。
加護の内容にも驚いたが、受けるために必要だと、額へされたキスが一番びっくりした。
無事、加護を受け取った僕は最後に一つだけ気になっていたことを願い出てみる。
「今さらですが、僕のことは呼び捨てでお願いします。様付けにはなれなくて」
「わかりました。では、親愛の証として私のこともヴィッツィと。話し方も無理のないもので構いません」
「ありがとう、ヴィッツィ!」
笑顔で告げた僕は別れた後も、その笑顔によりヴィッツィが顔を真っ赤にしていたことに気づかなかった。
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