プロローグ

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王子が駄目なら仕事人に。 声に出せばまた王子が邪魔してくるだろう。 だから、目で。念を送る。 気づけぇ、気づけぇ、……こっち向けっ! あっ、目が合った。 外される前に急いで口を大きく開ける。 一音ずつハッキリと。 『つ・れ・て・け』 命令形になったのは動きをわかりやすく。 よりももっと単純な理由。 王子。 実は結構イラついていた。 人の話を聞こうとしない態度に。 今も猫を相手に真逆の方向へ頑張っている姿に。 なにより、王子の中で確立された『猫=悪』の誤った方程式に。 おれにとっても猫たちが大切な遊び相手だから。 その後の仕事人は凄かった。 諦めることを知らない王子を、腕力に任せた力技で強引に引き離す。 暴れ騒ぐ王子とは対称に仕事人は始終無言で去っていく。 助かった。 けど、できるならもっと早くに動いて欲しかったよ。 一度振り返った仕事人に猫の下から手を振ってみる。 一瞬、彼は笑ったような気がした。
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