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「すきー」
いつの間に避難させたのか彼の両手は俺の首に回っていて、俺は半ばフローリングに押し倒される形で彼の猛烈なキスの嵐を受ける。
「ちょ、ちょっと待って!んっ、高岡、くん!」
「はぁ、はぁ。好きなの。好きだよー」
「うん、俺も好きだから。ちょっと離れて……ってか、ちょっと待って、ニャンニャンって!ニャンニャンって何?!」
「ニャンニャンはニャンニャンでしょ?もーエッチだなぁ」
彼と会話しようにも彼は俺へキスがしたいらしく、せっかく開けた距離はすぐに戻されてしまう。
彼の言うニャンニャンが何の事か分からないほど清純でもないが、以前にも彼のこのニャンニャン攻撃にあった人間が居るのかと思うと嫉妬でどうにかなりそうだ。
「ちょっと、ちょっと!ニャンニャン、ニャンニャンについて話し合おう!誰といつどこでしたか俺に教えてよ」
「やだー、俺早くニャンニャンしたいのに、リンはずっとチューしかしてこない。もういい!俺寝るっ!」
「え、……えーっ!」
自分の気持ちを落ち着かせるのと、ニャンニャンの意味をじっくり考えていた俺に痺れを切らしたのか高岡くんはするりと膝から抜け出し寝室へ行ってしまった。
可愛い酔っ払いの癖になぜそのような事には頭が回るのか、しっかり寝室のドアには鍵がかかっている。
「高岡くーん!高岡くーん!ごめんね、ここ開けてよ?ね、ね?俺とニャンニャンしようよ」
必死にドアを叩くが中から返事はない。三十過ぎたおっさんが若い子にニャンニャンしようなどと言っている様を見ている人が居たらさぞ滑稽に映るだろう。
滑稽でも何でもよかった。彼がせっかくきっかけを作ってくれたのだ。それに乗るのが恋人じゃないだろうか。
一時間近く寝室のドアを叩き、「ニャンニャンしよう」「ニャンニャン楽しいよ」と恋人に声をかけた俺だったが、中の彼からは何も返答がない。
おそらくもう寝てしまったのだろう。
絶対に明日も酒を呑ましてやると決意を露わにしながら、一人悲しくソファでブランケットをかぶり夜を明かしたのだった。
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