いきがみ

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数時間後、零課に一人の女性がやってくる。 金髪にサングラス、体のラインがもろにでている丈の短いワンピースという出で立ちで、その女は零課の客間のソファーに座りこむ。 「その子は、だあれ?」 女がそう言ってサングラスを下にずらして大きな目をのぞかせながら怪訝な顔をして問う。 「助手だ。幹本梓という」 杉浦は、梓が妹ということは言わなかった。 その真意が解らないまま、梓は女に向かってぺこりと一礼する。 杉浦はそんな梓に説明する。 「彼女は、身にとりつかせた霊的なものと共存・協力関係にある特別な人間で、名を、松村水國(まつむらみくに)と言う。霊的なものの能力を己に反映する格闘術、霊道術(れいどうじゅつ)に優れている。彼女に協力してもらって、教団に力ずくでのりこむ」 「え?」 「わかったらさっさといくぞ。梓、お前は、もしもの時の伝令役だ。だから、何もしないでつったっていればいい。そのかわり、何かあったら、見たこと聞いたことすべてを仲間にしっかり話すんだぞ」 「え?あ、はい…」 梓が答えると、早速二人は教団にのりこむ準備をはじめた。 杉浦は三國に気を使ったのか、別室に移動する。 三國の方がはやく準備が終わったようなので、梓は怖ず怖ずとその身の上についてきいてみた。 「紹介の通りよ。でも、まあ、わかるわ。こいつは京太郎の何なのさって顔してる。安心して。私、杉浦の彼女だから」 どこに安心しろというのかと梓が唖然としていると、別室で準備をしていた杉浦が戻ってくる。 すると三國は、床にペンを落とし、それを拾う際にバランスを崩したふりをして杉浦の胸に倒れこむ。 梓は思わず大口をあける。 「大丈夫か?」 杉浦はそう言って三國を立たせてやる。 三國はいたずらな顔をして梓をみやる。 これにはさすがに梓も怒りがこみあげてきて、ほおをふくらませて口をとがらせた。 それに気をよくして、三國は言った。 「私が、入信したいと言って気をひいているうちに、京太郎はりかちゃんを探して。それで、やばくなったら私が力づくであなたを逃がす。ついでにこのこも」 子供あつかいされていることに梓が怒りを顕わにしていると、三國は、行きましょうと言って部屋を出る。
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