いきがみ

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教団の本部は、都心の一角にあった。 「入信したいんですけどぉ」 三國が身をくねらせて入口を見張っている教団の信者らしき二人の男ににじりよっていくと、二人はぽかんと口を開けて三國に魅入る。 「ああ、暑い…。あ、どこかにハンカチ落としちゃったぁん、どこかしら?あなたたちも探してくださる?」 男たちは、はい、と返事をしてハンカチを探すふりをしながら、三國のしりに釘付けとなる。 ハニートラップというやつだろう。 胸なし寸胴の自分には死んでもできないな、と梓は思った。 そのすきに、近くに隠れていた杉浦は教団本部内に潜入する。 監視カメラは、霊的なものの力をかりて操作済みだった。 しかし、男をだしぬくには、霊的なものより女の色気を使った方がはやい。 そういうところだろう。 梓は、ただつったっているのがいやになり、杉浦について教団本部に潜入した。 意外にも杉浦はそれを咎めず、梓の手をひいて深部へと歩をすすめる。 そして、最奥に、とんでもないものをみつける。 血濡れた祭壇。 動物の血だろうか。 梓はそう思おうとしたが、そうでないことはすぐに知れた。 祭壇のさらに奥、隠し扉の先に、吊された人間の死体や、解体された肉が数多貯蔵されていたのだ。 「見つけてしまったのだね」 背後からの声に、杉浦と梓が振り返ると、白髪頭に長い髭をたくわえた老人と、五人の屈強な男が無表情に立っていた。 「君たちには、儀式を受けてもらうよ。それの結果いかんでは、教団に迎え入れてあげよう」 「“ここにいるものたち”がすべて見せてくれた。儀式を受けることは死を意味する。殺人者が、救世主みたいな顔をするな」 「どういうこと?」 梓が誰とはなく尋ねると、それにこたえて杉浦は言った。 「こいつらは、心臓に神剣を刺して死なない人間に神を降ろせると信じているんだ。そこのひげの老人――教祖は、その儀式をへてなお生きていたことから、生き神様と呼ばれているんだとよ」 「そうだ、生き神様に従って儀式を行えば、我々親衛隊に入ることも夢ではないぞ」 そうして屈強な男五人は上着をぬぎ、胸の傷痕を見せる。 その表情は恍惚としていて、梓はぞっとして血の気がひく思いがした。
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