ひとくい

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東亜仁徳大学に着くなり、杉浦は荷物の中からノートパソコンを取り出して何やら設定を始めた。 梓は、まずは聞き込みだろうと踏んでいたのだが、予想外のことに怪訝な表情をする。 それに気付いたのか、杉浦が説明を加える。 「頭の切れる犯人のことだ、縄張り内で派手な捜査をすればすぐに感知するだろう。聞き込みなどをしたら逆にこちらの動きがつつぬけになって、逃げられたり、下手をすれば俺たちがその殺しのターゲットになってしまうかもしれない。だから、文明の利器を使ってスマートに捜査する。クロノス率いる組織や政府のやつらが俺達を監視するために使用しているツールを逆に利用してやるんだよ。監視カメラや盗聴器、認証システムなんかをな。それらを傍受したり干渉したりする術を俺は持っている。三國の方が得意だったんだが、今更そんなことは言っていられない。やつらに感づかれる可能性はあるが、これ以上被害者が出る前に止めなければならない。そうしなければ、被害が拡大するのをただ見ていただけになる。それでは犯人と同罪になってしまう。直接的に死を与えることと、傍観者を決め込んで死を見過ごすこととは、大した差はないからな」 そう言って杉浦は思うところがあったのか、渋い顔をして押し黙る。 そして杉浦は、半日ほどで例の映像の犯人の音声と一致する音声を傍受することに成功する。 「犯人は今校内にいるようだ。わざわざ出向いて来て正解だった」 杉浦はそう言ってノートパソコンを鞄にしまい込み、梓と共に、傍受した音声が発せられた場所へと向かった。
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