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そこは留学生のための研究施設だった。
犯人は外国人なのかと梓は思ったが、犯人の日本語の発音からは外国人のなまりは感じられなかった。
だとすれば、日系人か何かだろうか。
梓が疑問符を次々と頭に思い浮かべるなか、杉浦は、ある一人の学生の研究室前で歩をとめた。
何を決め手にしたのかは解らなかったが、梓でもここだと解るくらい空気がよどんでいた。
杉浦が部屋の扉をノックすると、一人の男がでてきた。
そいつは、黒人の血が入っているであろう浅黒い肌と筋肉質な体をしていた。
「お前が、パックマンか?」
「そうだ」
そう即座に答えて、男は言葉を続ける。
「罠にかかったかわいそうな獣たちよ。僕は、“神の子”をかたるものを赦さない。神の子は僕一人で十分だ。僕以外は他の人間と同じ、ただの獣だ」
そう言って男は遮光の瓶のふたをあけて、その中身を梓達へ向かって浴びせかける。
杉浦は、梓をかばってその液体を全身にあびる。
突然のことに梓が目を白黒させていると、液体を浴びたところから、杉浦の皮膚が焼けただれてゆく。
「杉浦さん」
梓が思わず叫ぶ。
「杉浦…?クロノス様(かあさま)の実子の一人か…思いもかけず大物が釣れたな」
そう言って男はにいと不気味に笑い、また瓶を手にする。
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