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「杉浦(その男)はすべて知っているはずだよ。いつからかは解らないが、霊的なものから話をきいたことがあるはずだ。彼らは天皇と共に歩んできた種族だからね。時には支配され、時には友や従うべき高位の存在として」
「お前は政府高官を隠れ蓑にいろいろやっているときく。ある意味ではクロノスより卑劣な思想を持つ組織の創設者であり、首領であると」
杉浦がそう言って背後に梓をつかせたまま少しずつ後退して逃げるすきをうかがう。
それをにこやかにみやりながら、青年は言った。
「まあ、あたらずといえども遠からずといったところです。本来頭目の座は梓のものなのですがこのとおりなので、仕方なく僕が代理をしているのですよ」
「それって、私は首領として活動していた時期があるってこと?」
梓が目を見開くようにして言う。
「こたえかねます。また自殺されたら困りますので。でも、ずいぶん強くなりましたね、梓様」
呼びすてで呼ばれたり様をつけて呼ばれたり、梓は自分のおかれている場所が一体どこなのか解らなくなり、めまいをおこして倒れこむ。
杉浦はそれをだきとめて、青年を睨みつける。
「そう睨まないでください。あなたは婿候補なのですから。正しい王の血脈にあなたの血が組み込まれるかもしれないんですよ?何という誉れか、あなたにはわかりませんか?」
「つまり、お前は、梓にも俺にも手を出せないということだな?」
「まあ、簡単に言えばそうですね。でも、記憶の操作はあなた方を守るためですから、手をだす内には入りません」
青年はそう言って微笑んだ。
「くそったれめ…!」
「まあ、そう言わずに。では、挨拶もすんだことですし、今日の所は解散といきますか」
そう言って青年は窓から外へ出る。
ここは三階だが、そんなことは杉浦にはどうでもよかった。
「梓、大丈夫か?梓…!」
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