あんめん

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「また人肉の売買に関する依頼が入った」 ツクヨミ上層部との会合を終えて零課の事務所に帰ってきた杉浦がそう言って渋い顔をする。 「この所そんな話ばかりで嫌になりますね」 「ああ。霊的なものたちのざわつきも日々増している。俺のような能力者でなければ解決できない事件も増えてきた。犯罪は日々進化している。それに対処する側も進化しなければ、ゆくゆくは検挙率ゼロってのもありえるな。そうしたら警察は国民からたたかれて、へたをすれば解体することも考えられる。そうして国が無法地帯と化せば、外国がここぞとばかりに干渉してきて、その外国すらも、犯罪者達によって制度が根底から覆され、彼らに対する防壁がなくなって平和神話が崩壊してしまうような事態になれば、どんな未来が待っているかわからない。想像しただけで恐ろしい」 「だから私たちがいるんです。一つ一つ問題を解決していけば、たとえわずかでも、そんな未来を先送りにできます。ツクヨミの皆もそう思っているはずです」 「そうだといいんだがな」 そう言って杉浦は押し黙る。
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