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杉浦と梓が“秘密の部屋”に侵入すると、そこは一見すると書斎のようだった。
だがすぐに杉浦は隠し扉を見つけ、梓と共に隠し部屋へと立ち入る。
重く冷たい空気で満ちた真っ暗な部屋を杉浦がライトで照らすと、その壁の一面に、仮面のようなものがかけられていた。
いや、仮面ではない。
人間の顔だ――。
そう思いいたり、梓は息をのむ。
「いかれてやがる。食肉にして売った人間の顔をコレクションしているのだろう。標本化には高い技術がいる。これだけの数を扱っていることも考えあわせると、人肉取り引きの市場規模は思ったより大きいようだ」
杉浦はそう言って渋い顔をし、大きく一つ息を吐いた。
梓はあまりの異常さに血の気がひく思いがした。
「“ここにいるものたち”よ、真実を語ってくれ」
杉浦は外にもれない声音でそう言うと、眼を閉じて集中する。
数分の間そうした後、杉浦は梓に要点を告げる。
「三吉の正体は政府のエージェントであり、政府公認の人肉売買の仕事をこなすうちに精神に異常をきたし、仕事以外でも人を殺してその顔を切り落として標本化しているらしい。自分の力だけで成し遂げた仕事の証明、自身の力の象徴として。つまり、ここにいる人間は、氷山の一角というわけだ」
「そんな…ここには百体分はゆうにありますよ」
そう言って梓は言葉を失う。
そんな梓から目を背けながら、杉浦は言った。
「政府は、反政府組織の人間を抹殺してその身を解体し、それも食肉として売却しているらしい。パックマン事件で脚本家を名乗った男がいただろう。そいつの頭脳を使って世間に知られないように平然とな。本当に狂ってやがるよ」
誰かに向かって言うように杉浦が言葉を発したので、梓は杉浦が見据えている先を見た。
そこには、パックマン事件で脚本家を名乗った男が微笑しながら立っていた。
男はしばらく杉浦を見据えた後、口を開いた。
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