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「自首するなら、殺さないであげる」
「まさか、死神は、十海さん、あなただったの?」
「まあ、半分は当たっているわね。ここまで迫れたご褒美に教えてあげる。死神は、私たち、紀井翔太と三笠十海の二人でひとつの存在。男子と女子の情報網の中心に私たちがいることで、失恋やイジメを発生させて、生徒たちを自殺に追い込んでいたの。で、女の勘であなたの正体をはやくに気づいていた私が翔太にそのことを告げたら、翔太は、異分子だから早く始末しようって言ったんだけど、私はいいことを思いついて、待ってをかけた。どうせならあなたを“死神”にしたてあげて私たちは純白に戻りましょうって。そうじゃなきゃ、純白のウエディングドレスは着られないもの。血ぬれたウエディングドレスもいいけれどね。さあ、苦しい思いをする死に方をしたくなければ、死神として自首するか、ここから飛び降りなさい」
そう言って十海は笑ったのか、梓の耳元で息のもれる音がする。
「それはこちらの台詞だよ」
梓が、聞き慣れた声に視線を向けると、そこには杉浦の姿があった。
「だれよ、あなた。もしかして、こいつの彼氏?」
「だとしたら、何だ?」
そう言ってすごむようにした杉浦に怯んだ十海は、梓を捕縛する手を一瞬ゆるめた。
すかさず梓は十海の腕から逃れるように身をいなし、杉浦の方へ駆け寄った。
「大丈夫か」
杉浦の言葉に、梓は、はい、とこたえて十海をみやる。
十海は、にいと不気味に笑んで、全速力で走って、屋上から飛び降りた。
迷いのないあまりの行動に、梓は寒気がして、次の瞬間には、十海を失った痛みを感じていた。
しかし、紀井は何事もなかったかのように無表情だ。
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