始まりの桜

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始まりの桜

── 長く冷たい冬も過ぎ去りようやく春の陽気が町中を包み込む。 窓の外には桜が綺麗に咲き誇り、花びらの一枚一枚が春風に飛び乗り透き通るような青空を吹き渡っていく。 とても清々しい新学期だった。 そのはずなのだがそんな春の訪れにそぐわないような絶望感に襲われている1人の男子生徒がいた。 彼の名前は佐山 良(さやま りょう)という松川高校の生徒である。略して「さりょう」と呼ばれる事が多い。 成績は並、運動神経も並、ルックスは……並以下という平凡な高校生。 強いて特徴を挙げるとすれば、今をときめく陰キャラと言われる部類に属するところだろう。 彼はこれまでの人生において目立つことなくひっそりと空気のように学校生活を過ごしてきたのだ。 存在すら確認されない事もあった程だ。 ──そしてこれからもそんな変わらない日々が続くのだと思っていた ……だが彼の想いは虚しく、ある些細な出来事でこれからの学園生活が180度変わる事になったのだった。
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