エピソード1 遠い世界

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ワルキューレの表情はどんどん沈んでいく。おそらく自分の知らない場所にいるってことを段々理解してきてるんだろうな。 「いいかい。君のいた世界はこちらの世界から見ると、ゲームの中にあるんだよ」 「何だよゲームって?」 俺はテレビ台の中に置いてある最新のゲーム機器を指差して無表情でワルキューレの問いに答えた。 「それ」 それを聞いたワルキューレの動きが10秒ほど止まった・・そして停止していた思考が動き出したのか勢いよくじゃべり始める。 「バカにするなよ!こんな小さい中にマーベルランドがあるわけねーだろう!始まりの国だけでもこの汚い部屋よりずーーーーと広いんだぞ!海だってあるんだからなー!クジラとかでかいぞーー知ってるかクジラ?そりゃーもう大きいんだぞー!」 とりあえずやってもらうのが早いかな・・俺はゲーム機を起動してネットショップに接続した。そしてレトロゲームの項目からワルキューレの冒険を見つけてそれを購入してダウンロードする。 「はい。これを握って」 コントローラーをワルキューレに握らせ簡単に操作の説明をした。ぽかーんとその説明を聞くがおそらく理解はしていないだろう。 スタートボタンを押させてゲームが始まる。 「おいウキタミチナガ!これは何だ?どうするんだ?」 星座、血液型、好きな色を選択する画面が出てくる。 「ワルキューレ、自分の誕生日がいつかわかる?」 「誕生日?何だそれは?」 「自分の生まれた日だよ」 「生まれる?創造された日ってことか?そんなの知らないぞ。私はいつの間にか存在していたからな」 うむ。そうなのか。じゃー仕方ないのでこのゲームの発売日にでもするかな。ちょこっとネットで調べる。すると発売日は8月1日と書いていた。それじゃーしし座ってことかな。 「ワルキューレ。しし座を選んで」 「しし座?これか?」 「そうそう。血液型も知らないだろうから適当でいいよ。色は好みで選んで」 ワルキューレはあたふたとぎこちない操作ながらなんとかゲームを開始する。 「うおー。なんだこれは絵が動いてる」 テレビ画面にはワルキューレの冒険が映し出されている。今ではなかなか見ないドットのキャラクターに懐かしさを感じる。
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