プロローグ 時の鍵

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無数に閃く光の雷がゾウナの体を貫く。その一瞬完全に動きを停止した魔王の体にマスターソードの重く強力な一撃が打ち込まれた。 魔王ゾウナの体は黒い霧となり消滅する・・しかし・・その後方には新たな魔王ゾウナが生まれ出ようとしていた。 もう何体目のゾウナを倒しただろうか・・ ワルキューレは無限に分身増殖するこの魔王を完全に滅することができなかった。 「どうしたのですかワルキューレ・・随分とお疲れのようですが・・フフフッ・・」 余裕の笑みを浮かべてゾウナは、肩で息をしながら膝をつく美しい神の子にそう問いかけた。ワルキューレは眉間にしわを寄せ、怒りの表情を浮かべると怒鳴り返した。 「うるせー!何体も何体も現れやがって・・こっちは身が一つしかないのに不公平だろうが!このクソ野郎が!」 眩しく光り輝く金色の髪を三つ編みに編み。男の神々をも魅了する、その均整がとれ慈愛に満ちた美しい顔立ち。そんな彼女からは想像もできないような激しい口調が飛び出していた。 「いけませんね・・あなたのような美しい御仁がそんな下品な言い回しなど・・・」 「私のしゃべり方なんて・・てめーには関係ねーだろうがーー!」 ワルキューレはフラつきながらも立ち上がり、剣を構え直した。そして力強く踏み込むとゾウナに斬りかかる。 そんなワルキューレの攻撃をゾウナはヒラリと避ける。そのまま煙が上空に巻き上がるように高く上昇する魔王に、ワルキューレは左手をかざして魔法の詠唱を素早く唱えた。 ワルキューレの左手から豪炎渦巻く火の玉がいくつも飛び出し、余裕の笑みを崩さない不敵な男に降り注ぐ。 強力な炎の渦に飲み込まれて姿が見えなくなる魔王・・炎が消えた後・・そこには何も存在していなかった・・ しかし・・・ 「すごい魔法ですねワルキューレ・・さすがに一溜まりもありませんでしたよ」 そこには魔王ゾウナが何事も無かったように玉座に座り・・涼しい顔でワルキューレを見下ろしていた。
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