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プルルル・・・プルルル・・・
携帯の呼び出し音で目が覚める。しかし・・地獄の50時間労働後の睡眠からの目覚めである。そんなに簡単に覚醒できるものではなかった。俺はうるさく鳴り響く携帯をしばらくぼーっと眺めていた。5秒ほどそのまま呆然としていたが、少しづつ脳が覚醒していき状況を理解していった。
いかんいかん・・
我に返った俺は慌てて電話に出る。
「もしもし・・・宇喜多です」
「どうも山城だけど。宇喜多くん徹夜明けですまないね」
それは俺の担当編集者の山城さんだった。
「それはいいんですけど・・どうかしましたか山城さん」
「いやね・・早めに連絡した方がいいと思って・・実は・・少し言いにくいんだけど・・今連載中のウクレレ戦記マナブ・・・来月で打ち切りが決まってね・・・」
予想はしていたけど・・やはりそんな話か・・
「はい・・そうですか・・」
「すまないね・・一応もう少しだけ様子を見てくれと頑張ってはみたんだけどね・・」
「いえ・・自分の力が足りなかっただけですから・・」
「そうかい・・そう言ってもらえると気が楽になるよ。まー後1本あるからね。残りを全力で頑張りましょう」
「はい・・わざわざ連絡ありがとうございます」
「それじゃー宜しくね」
電話を切ってからしばらくすると・・事の重大さに気がついてきた。
「半年で打ち切りか!!やばいな・・これまでの連載での最短記録じゃないか・・」
俺は宇喜多道長。売れない漫画家をやっている。いや違うな。売れない漫画家をわざわざやっているのではなく。普通に漫画家をやっているけど売れていないだけである。
とりあえず俺は一息つく事にした。鍋に水を入れてお湯を沸かす。そして去年の出版社の忘年会でもらった残り少なくなったドリップコーヒーをカップにセットする。
お湯を少し注ぎ、しばらく蒸らす。そしてまた少し注ぐ。これを繰り返して時間をかけてカップにお湯を注いで行った。
インスタントとは違うコーヒーの芳醇な香りが鼻をつく。
それを幅が50センチほどしかない狭いベランダに持って行く。そこには俺のお手製のロッキングチェアーが置かれていた。
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