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その禍々しい殺気の先をゆっくり首を動かし見た。するとベットの上で気を失っていた女性が、いつの間にか体を起こしてウロウロする俺をジッと見ているではないか。
「あっ気がついたかい。体調は悪くないかい?」
俺はなるべく彼女に警戒させないように優しく・・そう優しく微笑みながら声をかけたつもりだった・・
「何だてめーは!ゾウナの手先か!!舐めた真似しやがってこのやろうー」
「へ?」
その反応に呆然とする。
彼女はベットから起き上がり、立てかけていた剣を取るとそれを俺の喉元にあてがった。冷たくリアルな刃物の感覚が伝わって来る・・
「チョーーー!待った待った!!俺は君を助けただけだよ。そんなわけのわからない手先でもないよ!」
俺の言い分を聞いた彼女はジッと俺を見つめると剣を収めた。しかし警戒心はそのままで不審な目で俺を見ている。
少しの沈黙の後。最初に声を掛けてきたのは彼女だった。
「それでお前は誰なんだ?私はなぜここにいる?」
「俺は宇喜多道長。ここは俺の部屋で、君は空から降ってきたんだ」
「空から・・・くそ・ゾウナの奴・・私に何をしたんだ・・」
彼女はブツブツと言いながら怖い表情をしている。そんな彼女に恐る恐る俺は話しかけた。
「すみません・・ところで君は何者なんだい?そのコスプレはワルキューレの格好みたいだけど?いやー懐かしいゲームのキャラだよね」
それを聞いた彼女は眉間にシワを寄せて俺を睨みつけた。
「てめー!!なんで私の名前を知ってるんだ!やっぱりゾウナの手先だな!」
「へ?」
剣を振りかぶると彼女は俺に切りかかろうとする。それを手で制しながら俺は必死に諭す。
「いや・・あの・・とりあえず落ち着いてくれ。君はワルキューレなんだね。あの・・俺が君の名を知ってるのは君が有名人だからだよ」
うむ・・どうやら相当痛い人みたいだな・・・ワルキューレになりきりすぎて本当に自分がワルキューレだと思い込んでるみたいだ。
ここはなるべく怒らせないでやり過ごしだ方がいいな・・
「有名人・・私は有名なのか?」
「そうだよ!君は魔王を倒した英雄だからね。そりゃーみんな知ってるよ」
その言葉がなぜか彼女の逆鱗に触れた。
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