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しかし、鈴音以外の女にニコニコと愛想を振りまく春一の態度は、正直見ていてムカつくものだ。
「一体どういうつもりだよ」
と春一の襟首を絞めあげたいぐらい、夏樹は腹をたてている。
つい先ほどまで、何があっても自分は春一の味方だと決心して来たが、鈴音を泣かせるならば話は別だ。
「だから、その頬の傷と、春が女ったらしに宗旨替えするのに、一体どういう関係があるんだよ」
見えてこない話に、夏樹がもどかしく尋ねれば、
「だから、鈴音を怖がらせちゃいけないと思ったんだよ」
春一は慌てたように言う。
「こんな傷みせてさ、怯えさせちゃダメだろう」
それから、
「昨日だって、冬依とコソコソやるばかりで、俺には近づいてこようともしないし……」
どこか拗ねたように横を向く。
「この怪我をしてから、鈴音の様子がずっとおかしいんだ」
春一はがっくり首を落として、
「俺は普段から威圧感はあるし、目つきも悪いから、こんな怪我なんか見せたら、鈴音に怯えられるんじゃないかって、な……」
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