春一の奇行

14/19
前へ
/20ページ
次へ
しかし、鈴音以外の女にニコニコと愛想を振りまく春一の態度は、正直見ていてムカつくものだ。 「一体どういうつもりだよ」 と春一の襟首を絞めあげたいぐらい、夏樹は腹をたてている。 つい先ほどまで、何があっても自分は春一の味方だと決心して来たが、鈴音を泣かせるならば話は別だ。 「だから、その頬の傷と、春が女ったらしに宗旨替えするのに、一体どういう関係があるんだよ」 見えてこない話に、夏樹がもどかしく尋ねれば、 「だから、鈴音を怖がらせちゃいけないと思ったんだよ」 春一は慌てたように言う。 「こんな傷みせてさ、怯えさせちゃダメだろう」 それから、 「昨日だって、冬依とコソコソやるばかりで、俺には近づいてこようともしないし……」 どこか拗ねたように横を向く。 「この怪我をしてから、鈴音の様子がずっとおかしいんだ」 春一はがっくり首を落として、 「俺は普段から威圧感はあるし、目つきも悪いから、こんな怪我なんか見せたら、鈴音に怯えられるんじゃないかって、な……」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加