70人が本棚に入れています
本棚に追加
春一は、これまで自分が纏う存在感だとか眼力の強さとかが、女の子たちを牽制するいい要因になっていたことに、まったく自覚がないらしい。
そういえば、
「俺は夏樹と違って、全然モテないよ」
なんて真顔で言っている男だ。
そして今回は頬についた傷のせいで、鈴音が怯えてしまうと思い込んだ。
なんとかしようと取った手段が、相手を選ばぬ全開の笑顔。
つまり自分の容姿を気にして、鈴音におもねった結果が、ジゴロ春一の誕生秘話だ。
「はぁーっ」
夏樹は大きなため息をつく。
そりゃあこれまで、けして本心をみせず、当たり障りのない受け答えしかしてこなかったイケメンが、いきなり１００％の人懐っこい笑みを浮かべて視線を向ければ、向けられた方は誤解する。
春一から笑顔を貰った女の子たちは、これが千載一遇のチャンスとばかりに、ちょっと浮き足立っているのだ。
最初のコメントを投稿しよう！