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それから、そんな風に春一に心配される鈴音だが、おそらく鈴音の方だって、他の女の子たちと同じように、春一の映画俳優ばりの完璧な笑顔にヤられただけの話だ。
ぼんやりしているのはいつものことだし、頬を染めたあの顔のどこにも、怯えた色なんか見えなかった。
『アホらしい……』
だからそんな事実、春一に教えてやる義理は、夏樹にはない。
ただ、
「まあ、今日は普通の顔で帰ってこいよな。じゃないと秋のやつが、ハムを丸ごと盗んで家出しかねない」
夏樹は、事実だけを教えてやる。
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