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そして夏樹は、
「鈴音だって、春の顔に傷のひとつぐらいあったって、今さら気にしやしないさ」
さりげなく付け足す。
「そうだろうか……」
自信なげに呟く春一だが、重ねて夏樹が、
「顔にどんな傷があったって、春は春に変わりないだろう」
言うと、
「まあ、そうなんだがな……」
困ったように、でも諦めがついたように、
「よっこらせ」
と立ち上がる。
そして、
「まあ……、そうなんだよなぁー」
天井を向いて呟いて、大きく息をひとつ吐き出した。
夏樹は、
「そうそう。男は顔じゃねぇぞ」
「お前が言うな夏樹」
冗談を返してくる春一は、ようやくいつもの顔に戻っていた。
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