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血の繋がった実の兄から、映画のスチール写真ばりの完璧な笑顔を向けられて、弟たちは仲良くガッシと抱き合って、ぶるぶると震え出す。
「なんだよ、おい。鬼のカクハンか。温故知新か」
秋哉が叫べば、
「秋兄。それを言うなら、鬼の霍乱、天変地異。温故知新ってどういう意味さ」
冬依が突っ込む。
「なあ、さっきから、ふたりとも何を言ってるんだ?」
春一が穏やかに問いかければ、ふたりはますます震え上がり、
「オレら学校行ってくる」
「うん、行ってきます」
ガタガタと椅子を鳴らして立ちあがると、一目散に家を飛び出して行ってしまった。
「……なんだよ、あれ」
春一は、仕方ないやつらだなぁと、音をたてて閉められた玄関ドアを見送るが、
「ん? 鈴音まで、どうしたんだ?」
鈴音はまだ固まっている。
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