70人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は、朝帰りどころか昼帰りした夏樹を待っていたのは、学校を早退した秋哉、冬依、そしてまだどこかぼんやりしている鈴音だった。
「なんだよお前ら。そろいもそろって学校サボりか? 今ごろ反抗期なのか?」
夏樹は、弟たちの意外な行動に、おかしそうに笑う。
いつもは長兄の厳しい目が行き届いていて、この年頃にしては、こちらが心配になるほど真面目な弟たちだ。
兄弟そろって学校を一日休む程度なら、多少は多目にみてやってもいいのだが、理由ぐらい聞いておくのが次兄の勤めだろう。
すると冬依は、ちょっと泣きそうな顔になって、
「冗談言ってる場合じゃないよ夏兄。春兄の様子がおかしいんだ」
「おかしい?」
冬依の口から出てきた、今回の当事者の名前に、夏樹は訝しげに首をかしげる。
春一は、兄弟の中では一番穏健派で堅物で、争いごとは極力避けるタイプだ。
まあ、いい大人が年中ケンカ三昧でも困るわけだが、春一はどちらかというと自分からアクションを起こす方ではなくて、巻き込まれるタイプ。
本人が望むと望まざるに拘わらず、災いごとは向こうからやってくる。
最初のコメントを投稿しよう!