70人が本棚に入れています
本棚に追加
夏樹は、ふーむと唸って、
「春の愛想笑いなんて、天変地異の前触れかな」
あんまりな意見だったが、
「あるよね」
冬依がすかさず同意し、秋哉も、
「それしか考えられねーよな」
うんうんと頷いている。
「非常用袋に食料詰めとくか」
さっそく冷蔵庫を漁りにかかるのを、
「いや待て」
夏樹が止めた。
「ハムは明日の朝飯に食うんだ。冷蔵庫に戻せ」
秋哉は、
「えーいいじゃんか。ハムぐらい」
お歳暮で貰ったハムの塊を、しぶしぶ冷蔵庫の中に戻す。
『ハム一本、本気で丸かじりするつもりか、こいつ……』
秋哉の野生児セレクトに夏樹はちょっと呆れながら、
「春もここんとこの冷え込みで、熱でも出してるのかもしれないしな。まあ今晩、俺が理由を探ってみるわ」
嘘かジョークかまったくわからないやり取りをかわして、一応はその場を収めた。
なんにしても春一は、弟たちから、散々な言われようである。
最初のコメントを投稿しよう!