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朝五時。星の巫女の一日は祈りの間から始まります。
星は日中には見えません。けれど存在しています。だからわたくしたちは明るい空にも星を求め、心の中で星を思い描き、祈ります。
祈りの間は静かです。巫女はたくさんおりますが、誰もが口を利きません。この部屋ではただ星と対話することだけが求められます。
ここで精神を集中することのできない巫女は、いざ託宣の夜となったとき、星の声を聞くことができないのです。
「おはよう、アルテナ」
一時間に渡る祈りが済み、部屋を出たところで、朗らかな声がわたくしの名を呼びました。
「シェーラ」
同期の巫女シェーラ・ブルックリンは、いやににまにました表情でそばまでやってきます。
「どう? 昨夜はヴァイス様はいらっしゃったの?」
わたくしは脱力しました。「来てないわ……」うなるように答えると、えーとなぜか不満いっぱいの声が返ってきました。
「えーってどういうこと、えーって」
「だって最近毎晩来ていたし、今夜だって」
「アンナ様に頼んで騎士ヴァイスを説得していただきました。そもそも修道院に男性が毎夜やってくること自体が間違いなのです」
「あなたたちの場合は特別でしょう? 何しろ星の託宣よ?」
託宣だろうとなんだろうと、関係ありません。ここは修道院、神聖な場所なのです。
このひと月、誰ひとり騎士ヴァイスの行動を咎めなかったことのほうが異常なのです!
そもそもわたくしは前々から修道長アンナ様に対処を求めていました。それなのに、何と言うことか、アンナ様に「あなたが頑固に逃げるからですよ」とたしなめられてばかりだったのです。
もっともアンナ様は敬虔な星の巫女。星の託宣を誰より信じる方ですから、当然と言えば当然なのですが……
『おかげでこのひと月眠れていないのです。どうか、お願いします』
やつれたわたくしがこう訴えて、ようやく動いてくれたアンナ様。少し恨めしい。
つまんないの、とシェーラは言いました。豊かな巻き毛の金髪を指先でいじり、心底不満そうです。
この友人は少し正直すぎるような気がします。
「シェーラ。わたくしたちは星に身を捧げた巫女ですよ? 従って――」
「『身も心も星のために』でしょ。はいはい分かってますよー」
「……本当に分かっていますか?」
「だってね、どんなこと言われても『でもあなたたちは例外でしょ』で終わっちゃうわよ」
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