第一話 いやだと言ったら、いやです。

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「……?」  ふと、疑問が浮かびます。  魔物退治はこの王都近辺の魔物を狩るだけではありません。外国に行くことだってあります。時には数週間、数ヶ月遠征に出なくてはいけません。  かたや騎士ヴァイスはここひと月、毎日わたくしのところに来ていました。ということは…… 「騎士ヴァイスは、魔物退治に出ておられなかったのですか?」  すると勇者様は目に見えて慌てました。 「あ……あ。ええと、『もっと重要な用事がある』と言って」 「……もっと重要な用事……?」 「いやでもそれはあいつにとって本当に重要な用事で。いやその」  しどろもどろになる勇者様。この人は根本的に嘘がつけない人のようです。 「騎士ヴァイス……」  わたくしは声が低くなるのを自覚していました。  魔物退治は本当に重要なお役目です。人々は日々、魔物の脅威に怯えて暮らしているのです。だから魔物を退治してくれることに関しては……騎士ヴァイスを純粋に尊敬する思いが本当にありました。  彼は、この国になくてはならない人だと。  それが――  それはわたくしの自意識過剰でしょうか? でも勇者様のわたくしを見て慌てる目。その意味を勘違いできるほど、わたくしは鈍感ではなかった。 「わたくしに会うために、お役目を放り出していた、と……?」
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