415人が本棚に入れています
本棚に追加
みなさまこんにちは。わたくし、アルテナ・リリーフォンスと申します。
突然ですが先日、星の託宣がくだりました。
「騎士ヴァイス・フォーライク、巫女アルテナ・リリーフォンスの間に生まれし子は、国の救世主となるだろう」
……その日以来、わたくしは日々騎士ヴァイスに追いかけられております。ええそれはもうしつこく。食事のときも勉強のときも果てには就寝のときまで、気持ちの休まるときがありません。唯一気が安らぐのは、巫女以外入室を禁止されている祈りの間にいるときでしょうか。わたくしはもうこの部屋で生涯を過ごしたいくらいです。
なぜ、追いかけられるのか?
簡単です。わたくしが逃げているからです。
なぜ、逃げるのか?
簡単です。わたくしは男性が嫌いなのです。
いえ、言葉が正しくないですね。正しく言い直しましょう――わたくしは、騎士ヴァイス・フォーライクが嫌いなのです。
大嫌いなのです。
元々男性は苦手です。世間様に主張できるほどの理由はありません。しいて言うならば、男性の本能的な『強さ』が苦手です。
でもそれは彼らのせいではありません。かと言って、無理をして男性に慣れる必要性も感じませんでしたので、わたくしは巫女になることを選びました。巫女は生涯独身で過ごします。美しい身のまま星に祈りを捧げ、星の声を聞くことに人生を捧げます。
この星の国エバーストーンにおいて、これほど高潔な職はありません。わたくしはこの身に誇りを持っております。
ただ、星に関わる仕事には男性もおりますので、修道院自体は男子禁制ではありません。
彼らはあくまで星に祈る仲間です。そう思うとわたくしも、彼らに対する緊張も少しやわらぎます。そのことが嬉しくもあり、この生活にますます満足していたのです。
だというのに。
「巫女よ。なぜ逃げる?」
「窓から入ってこようとする人など、受け入れられません」
「しかし何もモップで撃退しようとしなくとも」
「ちょうど掃除の時間に現れたあなたが悪いのです」
最初のコメントを投稿しよう!